IMAGE TRAVEL
『IMAGE TRAVEL』 画像、2021-2022
テーマのひとつは、インターネットのイメージ文化を取材することだった。インターネットでは途方もない数の画像にアクセスすることができ、その中から自分の目に叶うものがあれば、パソコンの画像フォルダに格納していく。知らない着ぐるみが沢山集まって開かれた謎の儀式を捉えたもの。仮設トイレが爆発し、火を吹きながら登っていく瞬間。3メートルほどの高さのあるハットを被ってバスケットボールをプレイすれば、相手のシュートをそのハットで阻止できると気がつき、実践している様子。馬鹿馬鹿しくも不思議と詩的な瞬間を見出すことのできる画像たち。それらの写真は、おそらく実際にいつか処かで誰かの手によって撮影された写真なのだが、インターネットにアップロードされ、それが撮影された文脈から切り離されたときに、得体の知れない存在感を放っていることを第三者によって発見される。その内容の不気味さ、得体の知れなさには時として思いがけない示唆を与えられることもあるが、この制作では、質のよくないカメラで撮影されていたり、何度も転載されることで圧縮され、絶妙に劣化した粗いジェーペグの質感や、特有の醜い色彩に魅了され、それを作品の要素とした。
『IMAGE TRAVEL (Raw)』 画像、2021-2022
小学生の頃、学習用に配られた、県の形に区切られた線画の日本地図を、コピー機のスキャン機能で歪ませながらコピーをとり、そこに現れた存在しない形の県の名前を考える遊びを友人としていたことを思い出し、それを制作の手法とした。インターネットで拾った画像を写真用紙にプリントアウトし、それをスキャナーでコピーを取る際にわざと手で動かしながらスキャンする。するとそこに、元の写真のディティールを保った部分と、ぐにゃりと変形して歪んだ色と形に崩壊した部分とが現れる。そんな具象と抽象との間を行ったり来たりしているようなぐちゃぐちゃになった画像の中から、興味深い色や質感、形が現れている部分を探し出して切り取っていった。純粋に意味がなく、しかし不思議と自立して存在しているように見えるイメージたち。インターネット・エコシステムの中に生息するイメージの亡霊のような存在。
『IMAGE TRAVEL』 OHPフィルム、ライトボックス、ベニヤ板、2021-2022
展示の際は自家製の什器を製作し、小さな窓から作品の画像を覗いて鑑賞できるような形態をとった。この窓は、ポジフィルムのマウントの枠と同じサイズで設計されている。マウントに収まったポジフィルムをライトボックスの上に置いて覗くと、まるで小さな世界がその画角の中に本当に収まっているかのように見える。その体験を作品の鑑賞方法に持ち込もうとした。インターネットの深くて暗い海の底に広がるイメージの原風景のような場所を彷徨いながら、シャッターを切っていった記録であるという意味で、展示のタイトルを「イメージの旅」とした。